インタビュー記事


取材日:2022.2. 3(火)  

話し手:佐賀市立巨勢小学校

     小学6年担任 

      白石 竜也様 

 

テーマ:「世界の中の日本の役割」

     ~SDGsフォーラム in 巨勢~

 

白石 竜也先生
白石 竜也先生


― 今回の公開授業開催に当たりSDGsに取り組まれた背景や経緯について教えてください。

  

 巨勢小学校(佐賀市巨勢町 以下 当校)は社会科の学習を研究している学校で、今年1月開催の全国大会に標準をあわせた学習活動を一昨年から進めてきました。その中で昨年から学習指導要領が変わり、6年生の教科書には「世界の未来と日本の役割」というタイトルで国連や国際協力を取り扱う学習項目が取り上げられるようになり、その中にSDGsを取り扱う学習項目が追加されました。私たちはこのSDGsに焦点をあてて授業づくりをしたいと考え、また2030年に成人を迎える子ども達のためにも社会的な問題として考えていくべきことでもあると思い、全国大会でのテーマとしてSDGsについて取り上げることにしました。

 そのSDGsの目標の中でも日本があまり実現できていない5項目「5:ジェンダー問題」「13:気候変動問題」「14:海の豊かさ」「15:陸の豊かさ」「17:パートナーシップ」の中から、どれか一つに絞って考えたいと思って選んだのが、子ども達にとっても身近に感じる部分でもあり、取り組みやすいと考えられる「14:海の豊かさ」の問題でもある『海洋プラスチック問題』でした。子ども達はこの問題に対して、「脱プラ派」と「リサイクル派」に分かれお互いの意見・考えをぶつけ合いながら、SDGsについて学習することができたと思います。

 

― 公開授業を実施するにあたり、子ども達にはどのようにSDGsを説明、教えてこられたのかを教えてください。

  

 子ども達に国連に関する授業を行った際の振り返りの時間に、「SDGsという言葉は聞いたことあるけど何かよくわからないから教えて」という問いかけが子ども達からあり、もっと学習したいという希望から授業実数の中にSDGsに関する時間を組み込んで教えるようになりました。ただ、授業の時間も短いのでパソコンやタブレットを家に持ち帰ってもらってSDGsのサイトを調べたり、興味がある項目を自分たちで探したりしながら調べ学習 を進めて、授業にも反映させています。その中でSDGsの17の目標に対して、それぞれの関連性を見つけたり、探したりしながら子ども達は理解してきていると思います。

 今回の公開授業の時にも、「海洋プラスチック」の問題解決を説明する際には、脱プラをすることで二酸化炭素の排出が抑えられ「気候変動問題」にも繋がるといった発言が出てくるといったように、子ども達のSDGsに対する理解は、関連性も含めて理解できてきていると思います 。

 

― 子ども達にSDGsを教えるにあたり、先生たちの苦労や困ったことはございますか?

  

 SDGsの目標の中には、子ども達が理解できる目標やそうでない目標があると思います。例えば、「8:働きがいも経済成長も」や「9:産業と技術革新の基盤を作ろう」といった大人にならないとわからないような目標については、理解してもらうには苦労しました。子ども達だけでなく私達教える側もそれぞれの目標について、もっと基本的な知識を学んでいく必要があると思います。できればSDGs教育の部分がシステム化され、6年生だけではなく他の学年や先生たちも含めて学んでいける環境が整ってくれたらと思います。

 

― 公開授業の中でSDGsに取り組んでよかった点、悪かった点について教えて下さい。

  

 先日の公開授業の後でも、色んなことに対して何かにつけてSDGsの何番の目標と関係するよねとかという意識を持つ子ども達が増えましたね。SDGsに対する子ども達の理解の速さ、知識を吸収する速さがよくわかり、成果が出たことが嬉しいです。これからもこの知識・学習したことを忘れずに中学・高校・大学・社会人と続けていってほしいです。

 また、公開授業を行うにあたり、当初はSDGsの14番の目標である「海の豊かさを守ろう」に絞って進めようと考えていたのですが、子ども達は全部の目標と合わせて2030年までに達成しないといけないという思いから、14番だけ達成しても意味がない、もっと他の目標と関連付けて考えてみた方がいいのではという意見が出たことで、14番以外の目標についても合わせて考えるようになりました。子ども達の自主性が見られとても素敵な授業ができたと思います。

  ここまで来られたのもGT(ゲストティーチャー)として来られた国際交流協会理事長の黒岩様によるご指導・ご支援のお陰だと思います。授業の最後には、黒岩様からのコメントを頂けたことで子ども達にはよりプラスの結果としてSDGsについて理解できたのではと思います。

 

ゲストティーチャー(GT)の国際交流協会の黒岩様
ゲストティーチャー(GT)の国際交流協会の黒岩様

― 公開授業以外の部分でSDGsに対する取り組みは行われていますか?

  

 学校としてはまだ十分に取り組んで はいない状況です。4、5年生の時に社会科の授業で少し触れる程度で意識づけを行いながら、6年生の時に深めていけるように進めています。他の学校では、別の教科で取り扱ったり、学校全体で取り組んだりするところもありますが、当校としては、社会科の授業の中で取り組んでいます。

 

― 公開授業に対する反応はいかがでしたか?

  

 授業研究会 という場で全国の方からご意見をいただきまして、「社会の授業の中でSDGsを取り上げる」ということ自体が少ないため、「先進的な取り組みとして参考になる」という意見が多かったですね。これから学ぶべき一教材として開発されていく際の良い叩き台が作れたのではないかと思います。

 

― 公開授業を行ってみて、何か課題は見つかりましたか?

  

 子ども達が学習する内容なので、教える側の私達大人がどれだけ理解しているかが課題になるのではと思います。教科書の巻末にSDGsの項目はありますが、取り扱わない学校もあるかと思います。しかし、子ども達のこれからの未来にも関わってくるので、如何に先生たちがこの内容を理解していけるのかなと思います。

 そのためにも外部、または色んな機関を利用して、子ども達はもちろん、私達教師ももっとSDGsに対して理解を深めていけたらと思います。

 

― 学校として、また先生としてこれから取り組まれていきたいことはございますか?

  

 昨年度と今年度では取り組み方が異なり、昨年度は3つの項目(No.12, 13, 14)に対して取り組み、今年度は1つの項目(No.14)に対して掘り下げて取り組みを行いましたが、1つの項目に特化して取り組んだ方が私も子ども達も中身の問題に対する切実感や理解度が深まることができて良かったと思います。今後はSDGsの全項目について考えていければ理想ですが、日本として、また佐賀県としての課題にどう取り組むべきかといった部分に私自身がもっと関わって学んでいけたらと思います。

 また、来年度以降も必ず6年生になったら、日本のSDGsの達成状況をみて、一つないし二つほどの目標を見つけて、今回と同じように、これからの日本のためにどうしていくかということを継続して考えていく予定です。そういった活動が学校内で積み重なっていくことが大事だと思います。

 

― 官民連携円卓フォーラムにお願いしたいこと、期待したいことはございますか?

  

 中学校・高校とかでSDGsに積極的に取り組んでいる学校は多くありますが、小学校でそこまで積極的にSDGsに取り組んでいるところや事例が少ないので、官民連携円卓フォーラム様で他の小学校と繋げていただけたらと思います。とくに低学年向けにこのSDGsについてわかりやすく説明できる手段や教材等があればいいと思いますので、そういった部分で協力していただけたるようお願いします。

 

― これからのSDGsに期待することはございますか?

  

 当校の6年生が全国規模の社会科の公開授業でSDGsへの取り組みについて発表を行いました。これからは社会科の授業だけでなく、他教科とも関連を持たせてSDGsが今以上に浸透した状態にできたらな、と考えています。SDGsを6年生からスタートさせ、中学校・高校へとつなげることができたら、よりSDGsを考える子どもたちが増えると思います。そうすることで、授業ではないところでも子ども達がSDGsについて接する機会が増えて会話が生まれ、これから社会の中で生きていく子ども達にはいい勉強になると思います。

 

以上

 

聞き手: 松尾 俊明