ジェンダー平等と質の高い教育の実現を目指して!

 

公益財団法人 佐賀県女性と生涯学習財団

 

https://www.avance.or.jp/index.html


 どん3の森にあるアバンセ(佐賀県立男女共同参画センター・佐賀県立生涯学習センター)の館長に、令和4年の4月から田口香津子館長(前職:佐賀女子短期大学学長)が就任されました。田口館長からは、アバンセに併設される3つのセンター(後述)の事業の充実に貢献することや、アバンセが『県民みんなの応援団』として、さらに社会的認知度を上げていくための様々な取り組みを行っていくことが館長としての仕事であるとお聞きしました。そのうちの一つが令和4年度の重要課題として取り上げられたSDGsへの取り組みでした。

 

 今回の取材には、田口館長と一緒にSDGsに取り組まれているSDGs推進ワーキングメンバーとして参加されている熊崎副館長、諸石さんの2名の方にもご協力いただき、皆さんからアバンセとして、また「公益財団法人佐賀県女性と生涯学習財団」(以下、当財団)としての立場からSDGsへの取り組みについてお話を伺いました。

 

アバンセNow Vol.108
アバンセNow Vol.108

財団の主な活動内容について

 

 当財団は、アバンセ開館当初(平成7年3月)からアバンセの管理運営に携わっており、具体的な活動としては、佐賀県の委託を受けて行う下記の①~③と、指定管理団体として行っている④の事業を行っています。

①男女共同参画社会の形成を促進する事業(男女共同参画センター)

②男女共同参画センター内に設置したDV総合対策センターの運営を通じ、男女共同参画社会の形成を促進する事業

③県民の生涯学習の振興に資する事業(生涯学習センター)

④アバンセの施設貸与事業(貸館事業)、情報サービスフロア及び視聴覚ライブラリーの管理運営事業

 

 上記の他にも、来館者の利便性の向上や各事業の更なる充実のため、施設貸与事業からの収益や県民の皆様からの寄付金『アバンセ基金』などを活用した自主事業にも取り組んでいます。(熊崎副館長)

 

 アバンセは、県民みんなの広場として「もっと頼れる」、「もっと楽しい」、「もっと学べる」、「もっと便利な」、「もっと身近な」施設を目指しています。(田口館長)

 


アバンセ外観
アバンセ外観


これまでのSDGs取り組み内容について

 

 SDGsの推進については、令和4年度のアバンセの重要事項として位置づけましたが、SDGsのテーマは、既に令和2年度のDV等暴力予防教育事業から講話の中でSDGsについて紹介したり、ジェンダー平等とDVの関係性について話をしたりしてきています。令和3年度には、生涯学習センターの「まなびぃフェスタ」や、指定管理事業の提案型事業として(各センターの枠を超えて職員が共に企画運営を行う)「小中学生チャレンジ応援塾」などの事業にも取り組んでいます。

 

 「まなびぃフェスタ」は、県民から公募した5名の実行委員を中心に内容を企画しています。その中の一つとしてSDGsクイズラリーを実施し、県民の皆様に周知を行いました。

「小中学生チャレンジ応援塾」では、チョコバナナ作りを通して「フェアトレード」を学んだり、また自転車を漕いで発電して、エネルギーを考える体験を企画しました。いずれも好評で、SDGsの17個の目標のうち、目標1、7、10、11、16につながる内容について学ぶことができました。(田口館長)

 

 このように令和4年度以前からもSDGsには取り組んできているような状況です。生涯学習に取り組むことにより、幅広い分野に触れ、SDGsの多くの目標に関わりを持つことができているのではと思っています。

 

 ただ、「小中学生チャレンジ応援塾」は体験型のため、どうしても定員を絞らざるをえないことが非常に残念でした。もっと多くの子どもたちに体験してもらいたかったですね。(田口館長)

 


SDGsの現在の取り組み状況について

 

 <貴財団として、個人として>

 すでに、職場としては、ごみの細やかな分別に取り組んでおり、現在では定着している状況です。組織としては、職員全体でSDGsを学ぶことから始めています。円卓フォーラムのHPより動画を拝借して入門編として職員に配信しました。また円卓フォーラムの大野幹事長を研修講師としてお招きし、SDGsの必要性や重要性についてお話していただきました。アバンセ1階の情報サービスフロアでは、SDGsに関する図書を集めてコーナーを作り、皆様が利用しやすい環境づくりを行っています。(田口館長)

 

 私個人としては、例えば、自動車から可能な限り自転車へ、ペットボトル購入よりも水筒持参へなど、生活スタイルが無理のない範囲で変化してきたように思います。(田口館長)

 

 今回SDGsに関わるようになって、以前からエコ素材の靴を買ったり、買い物の際の「手前取り」などしていたことが実はSDGsに繋がっていることに改めて気が付かされました。今後も続けていきたいですね。(熊崎副館長)

 

 エコバッグを持ち歩いたり、電気使用量が少ない夜の時間に洗濯したりすることで、余計な電力を使わなかったり、ゴミの分別もきちんと行うことでリサイクルに心がけています。(諸石さん)

  


  <他団体との関連>

 事業を通して、SDGsに取り組む学校や団体と連携をしています。令和4年度も昨年に続き「まなびぃフェスタ」の内容の一部としてSDGsに触れて楽しむ機会を予定しています。

 

 SDGsに関わる団体として、佐賀龍谷学園中学校・高等学校、えこいく(佐賀大学サークル)、NPO法人フードバンクさが、 NPO法人いとなみ、NPO法人循環型環境・農業の会様などの参加があります。(田口館長)

 

<地域・社会に対する取り組みについて>

 

 例えば、アバンセでは「男女共同参画センター」で扱っている『防災とジェンダー』というテーマで多くの方々と連携して地域発信をしてきています。SDGsと銘打っていないだけですが、アバンセの事業そのものが地域・社会へ、SDGsと同じ理念で、様々な発信をしてきています。

 令和4年度からは、SDGsとのつながりを見える化できるように考えています。具体的には、事業パンフレットに関連するSDGsの目標アイコンを載せるようにしています。令和5年には、もっと発展できればと思っています。(田口館長)

 


今後に向けて

 

 アバンセのミッションである男女共同参画社会の実現と県民の生涯学習の振興は、それぞれSDGsの目標5及び4そのものです。先ほどの「小中学生チャレンジ応援塾」のように、アバンセの事業の中でそれら以外の目標に関連した取組を行っている場合も含め、アバンセの活動はすべてSDGsと方向性を同じくしていると言っても言い過ぎではないと思います。

 

 このため、何かあらたまって新しい取り組みを行うというよりは、現在のアバンセの事業をより質の高いものにし、より多くの県民に関心を持っていただける、参加していただけるようにしていくことや、それらの事業とSDGsの関連性を明確にしていく取組をもっと進めていくことが大切ではないかと考えています。

 

 また、SDGsの発信拠点を目指すということについて、アバンセでは情報サービスフロアにSDGsに関連した書籍を集めたコーナーを新設しました。しかし、職員の中にはSDGsについて来館者に質問されたときに十分答えることができるかどうか不安を感じている者もいます。このため、私たち自身がSDGsに関する理解を更に深めるための研修なども引き続き行っていく必要があると考えています。(田口館長)

 


SDGsを進めていくうえで大事に、また必要とされていること

 

 一つ目は、理念の共有です。アバンセはSDGs目標4に直結する「生涯学習センター」と目標5に直結する「男女共同参画センター」、「DV総合対策センター」であると職員も限定して考えてしまいがちですが、SDGsの17個の目標は多岐にわたっていますので、アバンセで行っている自分たちの業務が如何に関係しているかを再認識することが必要だと思います。

 

 二つ目は、推進体制です。SDGs推進を自分ごととして職員全体ですすめていくため、全所属のメンバーが参画する6名によるワーキングチームを作りました。月1ペースで意見交換をしていきます。SDGsは、単なる流行とは一線を画します。世界共通の重要な課題解決のムーブメントです。アバンセでできることを、無理のない、持続可能な範囲で進めていけるように考えています。(田口館長)

 

 佐賀県立のセンターという立場からは、SDGsをもっと内外に広く発信していくことが大事だと思います。(熊崎副館長)

 

 SDGsを広く発信していくということでは、DV総合対策センターは色んな所に講話に伺うことが多く、学校は小学1年から高校・大学・専門学校等、あと民生委員の方等にもDVや児童虐待に関するお話をさせていただいたりしますが、その際、SDGsの目標5『ジェンダー平等を実現しよう』が関連するということを伝えることで、SDGsを知っていただくきっかけになればと思っています。(諸石さん)

 

DV予防教育(中学校)の様子(DV総合対策センター)
DV予防教育(中学校)の様子(DV総合対策センター)

これからのSDGsに対して期待されることや意気込みについて

 

 目標17である『パートナーシップ目標を達成しよう』。ここがキーワードではないでしょうか。それぞれの目標を掲げた団体が共同できることでより大きな力を発揮できると信じます。自分たちからの発信を点ではなく、オープン・マインド(Open Mind)で、協力して行っていく必要があると思います。アバンセだけで進めるのには限界がありますし、いろんな使命を持たれたところとパートナーシップを結んで一緒にやっていかないとSDGsは実現できないだろうと思います。あとジェンダーの問題も日本は低いため、中核組織としては、もっと発信をしていかないといけないかなと思っています。(田口館長・熊崎副館長)

 

 自然災害の多発など地球温暖化の影響を肌身で感じております。未来の命と暮らしを左右するのは、国の利害を超えたユニバーサルな仕組みであるSDGs推進にかかっていると思います。(田口館長)

 

 中学生や高校生には、予防教育の中でジェンダーギャップ指数について紹介させていただくこともあります。まだまだ日本のジェンダーギャップ指数は低く、実際の指数を知ると、生徒の皆さんはびっくりされますが、この低い指数を自分たちの世代で変えていかないといけないという熱い思いを感想に書いてくれる高校生もいます。このように若い世代の人が自分たちからこの状況を変えていこうとする動きになるように、私たちももっと広く発信していきたいと思います。(諸石さん)

 

SDGs目標17
SDGs目標17

SDGs推進ワーキングメンバーの皆さま
SDGs推進ワーキングメンバーの皆さま

取材場所:アバンセ館長室

取材日:2022年9月8日

取材者:松尾 俊明