インタビュー記事


取材日:2022.3. 17(木)  

話し手:グリーンコープ生協さが

     専務理事 藤瀬 広樹様 

 

テーマ:SDGsへの取り組み ~カーボンニュートラルを目指して 

 

 

専務理事 藤瀬 広樹様
専務理事 藤瀬 広樹様


― SDGsを取り組み始められたきっかけについて教えてください。

  

 グリーンコープ生協は地域の生活者が集まった生活協同組合で、組合員自身の手で開発した安全で環境にも配慮した商品や、産直による農畜産物の、カタログやお店での共同購入で、大きく成長・発展してきました。

 グリーンコープのテーマの中に「みどりの地球をみどりのままで」という言葉が設立当初の30年以上前から根底にあります。環境問題、水の問題、食品添加物の問題等色んな社会問題を抱えてきた中で、それをクリアしていきたい、環境保全を行って行きたいという思いから、グリーンコープでは4R(リフューズ、リデュース、リユース、リサイクル)に取り組んできたことが原点となっています。

 だからSDGsに取り組むというよりも、組合員でもある母親の皆さんたちの思いが今取り上げられているSDGsの考え方と合致していて、SDGsを始めたというより既に取り組んでいたのではないかと思います。

 

 


ー 現在進められているSDGsの活動について教えてください。

 

 ■家計改善支援事業

 

 先ず一つは、SDGsの1番目の目標「貧困をなくそう」に該当する生活困窮者の支援事業を行っています。これは自治体から受託している事業ですが、生活困窮者の家計を改善する事業として佐賀県内10町、佐賀市、嬉野市の家計改善支援事業を受託しています。生協独自としても、「生活再生事業」として家計の見直しを行い、困窮状態を脱せるように進めようとしています。

 また、2001年頃に福岡からスタートしたのですが、社会問題化した多重債務問題を生活者の課題として捉えて、何とかできないかということで「生活再生事業」を独自に行っています。佐賀では4,5年前から市内で生活再生事業を行っています。

 そして、厚生労働省がグリーンコープのこの「生活再生事業」をモデルにした任意の事業「家計改善支援事業」として各自治体でも取り入れる動きになりました。そのため自治体が行う家計改善支援事業の国の研修はグリーンコープが担うことになり、歴史が長い福岡のスーパーバイザーが講師として各自治体の家計改善支援事業の相談員の研修も行います。

 

1番目の目標
1番目の目標

 ■リユース、リサイクル活動

 

 グリーンコープでは、日常行われている商品の「リユース」「リサイクル」は毎日配達担当者が持って帰ってくることから始まります。具体的には、以下のような「リユース」「リサイクル」が行われています。

 

 ・牛乳、ケチャップやソースは瓶を使用し、リユースする。

 ・商品をお届けする際の袋も回収してリサイクルする。

 ・カタログを回収して、回収した紙はトイレットペーパーにリサイクルする。

  (カタログの回収率は約70%)

 ・卵のパックはモウルドパック(*1)を使用し、回収して段ボールにリサイクルする。

   *1 非木材紙を素材にした環境にも人にもやさしいパッケージ

 ・お肉が入っているトレイについては、回収してトレイとしてリサイクルする。

 

 

 また、グリーンコープの商品製作の特徴でもありますが、これから開発するシャンプー・リンスといったものは、詰め替え用のみ開発する予定で、容器は市販のボトル等を使用していただくことで脱プラスチックを進めていくつもりです。

 あと、連合会でも検討が進んでいますが、環境配慮型の包材に切り替えていくことや、現在回収しているカタログについては環境問題として放置されている竹林問題を解決するために「竹紙」を使用するよう検討を進めています。2022年度からは竹紙を使用したカタログが始まると思います。コスト面では若干値上がりになると思います。しかし将来のことを考えた場合、多少痛みは伴いますが、進めて行く必要があると思っています。

 


 ■カーボンニュートラル

 

 2022年の6月か7月くらいには福岡県の4つの配送センターを完全EV化する予定です。配送センターの屋根に太陽光パネルを載せてそれで発電した電気を利用して充電に回していく予定です。福岡先行で進めていくことによりグリーンコープ内でモデル化され、将来的には他の事業所等にも拡がっていくと嬉しいですね。

 

 その他にも、冷凍品にドライアイス(二酸化炭素を個体にしたもの)を入れることを今後止めていく予定です。年間1億円ほど使用しているドライアイスの代わりに「凍結温度を-17℃に改良した保冷剤」に変更していく予定ですが、これに対しても新たな設備投資が発生することになります。業務用の冷蔵庫・冷凍庫も今はフロンガスを使用していますが、これもノンフロン化に切り替えていきます。そのためには新たにノンフロン化の冷蔵庫・冷凍庫が必要となるため、さらに費用がかかりますが、佐賀県内の3つの配送センターをノンフロン化していく予定です。

 

 ■これからの活動目標

 

 これらの活動を行うことで、グリーンコープがカーボンニュートラルな事業所になり、そのグリーンコープを利用することで二酸化炭素を一切出さなくなることができます。それに「グリーンコープでんき」を利用することで、実質的にはカーボンニュートラルができて、二酸化炭素排出係数を0にできます。また、グリーンコープの商品を利用することでリユース・リサイクルに参加し、環境負荷が軽減されます。こういった活動を実施することで社会貢献にも参加して、カーボンフリーな生活を送れるようになります。それが地球温暖化の問題やCO2削減といった問題に参画することになると思います。皆がそういう意識を持った地域社会になれればいいと思います。

 

 グリーンコープとしては、これだけのことを行ってきているよともっとアピールしていかないといけないと思います。カーボンニュートラルをグリーンコープ全体として目指していくということ、サプライチェーンもカーボンニュートラルを是非目指していくことが社会の流れになってきていますので、メーカーや物流の運送会社、取引先といった所にも一緒に目指していけるように呼び掛けていきたいと思います。組合員の方達には『省エネや二酸化炭素を出さない電気を使いませんか?』と呼び掛けて行くことで社会全体の二酸化炭素を減らすカーボンニュートラルを実現できる地域社会を作っていきたいと思います。

 


ー これまで活動を続けてこられて、苦労された点や問題等はございませんでしたか?

 

  マヨネーズの瓶のリサイクルを試みたのですが、工場のラインにはリサイクルできない瓶しかのらなかったため、リサイクルできずに回収ができないことがありました。リサイクルできない瓶を回収してくると必然的に事業所で処分するしかなくなり、事業所のゴミとしての処分代が発生し、結構な費用が発生しましたが現在は解決済です。

 

 また、組合員の方達の協力がないと「リサイクル」「リユース」といったことが出来なくなります。リサイクルされる袋やトレイの回収においても汚れが残ってたりするとせっかく回収したものを廃棄しなくてはならない状態になったりするため、そういった部分に対して組合員の方達に協力していただかないと実現出来なくなります。瓶に牛乳が残ってたりとか、瓶に自分の名前が書かれたりとかすると回収できなかったりするので、そうならないように徹底していただくことで対応していただきました。

 

 外袋の中に真空パックされた商品が入っていたりする過重包装の問題もあります。その過重包装を排除できないかなとは思います。日本の商品は過重包装が多いため、この問題を解決することでプラスチック問題の解決とまではいかないかもしれませんが、改善に向かうのではないかと思います。連合会の中でも過重包装といった問題を検討して行ってもらえればと思います。そして地域社会の中でも過重包装が無くなることで一歩前進していくのではと思います。

 


ー 最後にSDGsに期待したいことはございますか?

 

 SDGsを社会的アピールのためではなく、社会全体がこのSDGSの17個の目標に向かって実体として推進していくような姿になってほしいと思います。そうやって体現していくことで、SDGs(持続可能な開発目標)は目標ではなくなり、実体としての持続可能な社会を作り上げていけるのではないかと思います。企業にとっては、支出が増え多少痛みを伴うこともあると思いますが、しっかりとした基盤を作り、後は、実践あるのみだと思います。やはりSDGs宣言を行い、目標に対して実践していくことが一番大事だと思います。

 

以上

 

聞き手: 松尾 俊明