取材記事


取材日:2022.3. 21(月)  

取材イベント:環有明海高校生サミット<第2部>交流会、講和「有明海に潜むクラゲの世界」

取材場所:鹿島市干潟交流館(一般参加者はZOOMオンライン配信)

コーディネーター:佐賀大学 樫澤 秀木氏

司会・運営:森里海を結ぶフォーラムスタッフ 鈴木 弘章氏

 


 福岡・長崎・佐賀・熊本と、有明海に面する各県の高校生が集い、未来の環境について考えるオンラインサミットが2022年3月21日(月)に鹿島市干潟交流館「なな海」にて開催されました。

 当日は2部構成の第2部が開催され、各高校からの環境問題に関する発表・交流会や学生同士のディスカッション(意見交換)が行われました。 ※第1部は3月3, 10, 17日にオンラインにて開催済。

 

 

 

【参加団体】

 福岡県:伝習館高校 佐賀県:龍谷高校 長崎県:FFF長崎 熊本県:芦北高校

 「やながわ有明海水族館」の館長を務める高校生の5つのグループです。

【プログラム内容】

1.午前・午後に参加高校別に有明海に関連する環境活動の発表

  FFF長崎: 気候変動と動き出した長崎の若者たち

  伝習館高校: ニホンウナギと森里海 – 2つのサンクチュアリを通して学んだこと

  やながわ有明海水族館: 小さな水族館の奮闘記

  龍谷高校: 裏を再び表に ~佐賀の水文化を未来へ~

  芦北高校: 森から海をみつめ、海から森を見つめる

        ~林業科が取り組むアマモ場再生活動~    ※発表順

2.高校性によるグループでのディスカッションを午前・午後1回ずつ実施

3.基調講演:佐賀大学の藤井直紀先生による「有明海に潜むクラゲの世界」について講演

4.関係者のあいさつ(開会・閉会)

 

【環境活動発表】

 

<FFF長崎>

 「FFF長崎」は長崎県内外の高校生を中心に結成された環境保護団体です。地球温暖化への危機感より、「気候非常事態宣言」を発出してもらうよう長崎県議会に請願書を提出する活動を行いました。多くの議員の方達と面会し、オンラインまたはオフラインによる会議、街頭署名等を行い、提出した請願の内容は次の通りです。

  ①気候非常事態宣言の発出

  ②環境学習会の推進

  ③環境配慮型の経済の構築

  ④県の環境実行計画の県民に対するわかりやすい報告

 残念ながら県議会では採択されなくて悔しい思いをしましたが、これからもとにかく声をあげていくこと、行動し続けることの大事さ、対立ではなく対話の必要性を学んだ学生達の発表でした。

 

<伝習館高校>

 「伝習館高校」はニホンウナギが2014年に国際自然保護連合により絶滅危惧ⅠB類に指定されたことで危機感を持ち、「ニホンウナギの絶滅を回避するための2つのサンクチュアリづくり~植林と落葉で創成する私たちとウナギの未来~」というテーマでニホンウナギの生態を調査し、学校内で飼育を行い、川に放流したりすることで環境の違いによる死亡率の違い、水質測定などの実験結果を発表しました。他にもクスノキ落葉を利用することでウナギの感染症が防止できることが発表されました。とても細かいデータによる分析に参加者は感心していました。

 

<やながわ有明海水族館:亀井裕介さん) >

 水族館の館長を務める福岡の高校生(城南高校)亀井さん(16歳)による「小さな水族館の奮闘記」が発表されました。2021年4月に館長になり、普段は色んな場所で貝やトンボ、魚といった生き物を探している館長からは、柳川掘割に棲む46種類の淡水魚の話、絶滅危惧種や外来種(海外・国内)の話を中心に柳川に棲む生き物の生態系について発表されました。

 その中で「自然の環境を未来に繋ぐためにどうしたらいいのか?」という疑問に対して『自然の中で遊ぶ子どもが一番の絶滅危惧種であるため、もっと自然の中で遊ぶ子ども達を増やすことが素晴らしい環境を未来に繋げることができる。』という言葉が印象的でした。

 この子ども達の自然離れを解消するためにやながわ有明海水族館で何ができるのかという事で最近始めたことに次の2つがあります。

  ①子ども職員制度 … 人手不足の解決、将来の館長の育成、自然離れの解消に繋がる

  ②お堀の大調査  … 生き物の観察会の開催、体験⇒勉強となる効率的な啓発

小さな水族館でも自然環境の未来のために頑張っている館長の情熱が伝わる発表でした。

 

<龍谷高校>

 「龍谷高校」では『裏を再び表に』というテーマで環境保全への取組について発表が行われました。佐賀でたくさん見られるクリーク(農業用用水を所有するための水路)を次の3つの視点から考えた活用方法が発表されました。

  ①クリークをきれいにする。

  ②クリークを活発化する。

  ③クリークに興味を持ってもらう。

 これらの活用により、昔から存在する佐賀のクリークがきれいになり、皆に利用してもらい、そして皆に興味を持ってもらうことで、地域住民とのつながりが持てるようになり、環境保全に繋がるのではという発表でした。

 

<芦北高校>

 「芦北高校」では、長年取り組んでいる『アマモ場再生活動』について発表が行われました。アマモとは、海草(うみくさ)の1種で、この海洋植物を支えているのは、上流に広がる芦北の豊かな森であり、その森から発生する豊かな養分・ミネラルが川を通じて海に供給される事でアマモが定着し、豊かな海を育みます。このように森と海のつながりは強く、「森から海を見つめ、海から森を見つめる」ことが私たちに求められていると考えて、活動した結果が発表されました。

 芦北町は環境悪化が原因で漁業資源が減少し、林業の衰退もあって町の荒廃が進行していました。この状況を打破するために、森林整備に取り組む「緑の森づくり活動」や、アマモを利用した「海の森づくり活動」を通じて研究を行いました。その研究の結果、以下のことがわかりました。

  ①ヘドロを用いたアマモ栽培技術の確立!

  ②海への移植方法の確立!

  ③芦北湾のヘドロはアマモの栽培に大変有効である!

 このように豊かなアマモ場、豊かな漁場、豊かな海を守るために、アマモ場を再生することで豪雨災害からの復興に繋げられるという研究結果が発表されました。

 

 どの学校の生徒達も、それぞれの分野に真剣に取り組んで発表する姿には熱いものが感じられました。悔しい思いをしながら自分たちの思いを伝える高校生、地道に時間をかけて調査したり聞き歩いたりした結果を報告する高校生、未来の自然や環境のために一生懸命に頑張っている高校生の思いが伝わるどれも素敵な発表でした。

 

【ディスカッション

 

 研究発表の間には、各校の生徒達が4つのグループにわかれて、次のテーマについて意見交換が行われました。    

 (午前、午後1回ずつ)

  ①有明海での自然遊び (AM開催)

  ②有明海のいきもの  (PM開催)

 ディスカッションの最後には、各グループから1、2名ずつ代表による発表が行われました。とてもユニークな意見や色んな発表があり、皆が楽しく話し合うことが出来た時間でした。

 

調講演

 

 午後からは、佐賀大学農学部特任助教の藤井直紀先生より、次のテーマでお話いただきました。

  テーマ: 有明海に潜むクラゲの世界

 藤井先生はクラゲの種類や生態、そして地域別の生息状況といったクラゲに関することを研究されていて、クラゲを探して研究することで有明海の海の特徴を調査されています。最近ではクラゲの値が高騰し、クラゲの捕獲が増えてきたため、他の漁業への影響も含めて考えていく必要があるそうです。重要な水産資源となったクラゲのこれからの活用について考える必要性についてお話されました。

 

後に

 

 今回遠方から参加していただいたゲストの農学者の嘉田由紀子様、森里海研究所所長の田中克先生のお二人からもお言葉をいただきました。最後には、有明海漁師の平方宣清様や先生方からのご挨拶をいただいて交流会は終了いたしました。

 あいにく天気が悪く、干潟体験は出来ませんでしたが、参加した高校生はじめ、主催者の方々やスタッフの方々のおかげで、当初の予定終了時刻16時を超過するほど盛況な交流会になりました。終わった後の高校生達の満足した顔が素敵でした。有明海を囲む4県の皆が、将来の有明海が抱える自然の問題や温暖化等の気候問題などについて真剣に取り組む姿に注目しながら応援していきたいと思います。

 

以上

 

取材: 松尾 俊明