インタビュー記事

取材日:2021.6.22(火)  

話し手:株式会社 西村商店 

    西村 明美社長 


― SDGs に取り組まれて 1 年になりますが、 始められたたきっかけ、 開始時に苦労された点はございますか?

 

 SDGsを知るきっかけは2年ほど前に旅行先の道の駅で偶然目にしたSDGsのカラフルな看板でした。非常に人目を引く場所に掲示されていたので、 そこにあったパンフレットを手に取って読んでみたと ころ、持続可能な世界の発展のために誰一人取り残さないという理念のもと17のゴール、169のターゲットから構成された国際的な開発目標で、SDGsは地球の限界を絶望として捉えず、希望から一歩を踏み出すためのツールであり、豊かさを追求しながら、地球環境を守り、私たち一人一人が社会と未来に対して責任を持った行動をとっていくための指標であると記載されていました。 これを何とかうちの会社に、うまく取り入れられないかなという思いと、どういった親和性があるのかを考えてみました。

 

 弊社ではそのころ、社員一丸となってISO の環境と労働安全衛生に取り組んでいる最中でした。 そのうえに、更にSDGsへの取り組みを皆に宣言したので最初はすんなりと受け入れてもらうのが難しい状況でした。 私自身、SDGsの事がよく理解できていない状況で幅広い課題にどのように取り組んでいったらよいのか考えあぐねていたところ、地球市民の会の大野さんと出会いサポートを仰ぐことで、弊社でも取り組めるという確信が持てました。

 

 また、始めようとした矢先に丁度コロナが始まり、先行き不透明な状況下に陥りましたが、逆にこういった時だからこそ覚悟ができて落ち着いて取り組めたのかなと思います。先が見えなくて不安だからこそ、軸があるものをしっかり持っておいた方が将来的にもいいのかなと思い、コロナの影響の中でもSDGsに取り組む覚悟を決めることになったのではないかと思います。

 

 会社にとって、このSDGsは変化ではなく変容だったのではと思います。組織が変容するいい機会だったかなと思います。私が想像する以上に社員の皆、一人一人が高い意識とかモチベーションを持って成長しているのを見ていると、SDGsとはひとりひとりが目覚めていくことのできる有難いツールであると いうことがわかって非常にうれしく思います。

 

 


― この1年間SDGsを実施するにあたり、モチベーションを維持するためには何を行われましたか?

 

 SDGsは 持続可能な社会、会社、家族、個人といった 各々を 繋いでいく担い手( 作り手 )である人達を育てるという意味でも非常に使命感があ り、必要な事だと思います。結局自分の事として何でも捉えていくといった小宇宙の意識の持ち方が 、 ひいては持続可能な地球環境の確立といった大きな宇宙意識へとつながっていくのでそういった意識改革をこれからもっと展開していきたいなと思います。

 

 誰一人取り残さない皆の希望が詰まった会社づくり、人の強みを生かして弱みは組織で中和する、そんな横並びの理念を皆で共有し、お互い尊重しあえる組織を目指し色々な勉強会や講習会に参加をしたりしています。

 

 

 


― SDGs の活動は 、 現在 どのように して 進められていますか?

 

 社員の皆には主体的にまた定期的に活動してもらっていて、私はどちらかというとその活動を傍観しています。この活動を通じて、組織がトップダウンではなく、社員全員によるボトムアップで進んでいくようになり、各人が自分自身で情報を発信する事で創造性の発揮ができるようになり、その創造性が融合して一つのものを作り上げていく事ができているという所がすごく面白いと思います。

 

 SDGs は私たち一人一人が

 自分のため

 未来の人々のために

 自らが主体となって

 自らの責任で

 自らの考えで

 自ら行動していかなければならないもの

 スタッフ全員が常にこのことを意識しながら日々の仕事に邁進しています。

 

 SDGsに取り組みますと宣言してから、また発信する事でこちらが求めていた事に対して、色んな企業様からお声をかけていただくようになり、繋がりが広がったように思います。最近様々な分野でダイバーシテイが企業経営のキーワードのように用いられていますがSDGsは非常にわかりやすい目安というかものさしになります。

 

 


― この1年間、SDGsを続けてこられてよかった点、また成果はございますか?

 

 SDGsの事を人材育成のツールと言ってしまうと簡単ですが、こちらがこうしなさい、ああしなさいと言うと、人はコントロールできないと思います。だけど自分自身をきちんと自己管理をして、自分をコントロールする事で、やれる範囲の事を見つけていくための、またそれを教えてくれる意味でのツールとしてはすごく最適だと思います。

 

 また、地球市民の会の岩永様たちが定期的に来てくださって、色んなレクチャーしてくださる事も大きかったと思います。地球市民の会の皆様とうちのスタッフみんな一人一人が努力して楽しみながら活動させていただいている事が、一番良かったのかなと思います。

 

 


― 逆に、この1年間SDGsを実践されて、苦労されたことはございますか?

 

 苦労はないですね。皆に丸投げでお願いしていたので、こちらが勉強させていただいていたという立場でしたので、苦労という苦労はありませんでしたね。

 

 


― 現在、官民連携の必要性が叫ばれていますが、行政との官民連携についてどのように考えられていますか?

 

 弊社は現在、AEON跡地のまちづくりプロジェクトに一民間事業者として参画させてもらっています。このプロジェクトを地方創生の一環として上峰町のこれからのまちづくりにSDGsを組み込み、企業や大学と連携して行政と町民、ひいては地域外の外部人材と連携して持続可能な循環型地域モデルを目指すことができたらいいなと思っています。

 

 AEONが閉鎖して2年近くになりますが、まずはこのプロジェクトによって跡地の開発がランドマーク的存在となって、町民の方の生活の質の向上というか、上峰町にいてよかったというシビック・プライド(Civic Pride)につながるような場づくりが出来たらいいなと思います。その中で弊社として何ができるのかなという気持ちがありますね。

 

 このプロジェクトは成功すれば日本初になるというLAVB方式を採用して取り組んでいます。町と民間事業がフィフテイ・フィフテイでプロジェクトを進めるという新しい手法ですがそのため、進みにくい部分もありますが、これが軌道に乗ると本当におもしろいものがSDGsによって生まれてくるのではないかと思えるんです。

 行政主導でもなく、民間主導でもない共存共栄の精神で一つのものを作りあげていく手法なので、SDGsとの親和性が大きいのではないかと期待しています。

 

 


― SDGsを始められてから、実施しようとして出来なかった事はございますか?

 

 それは今のところ思い当たらないというか、思い描いたものは今のところ全部形になっていきつつあるので嬉しい限りです。

 

 


― 今後の目標について、お聞かせください。

 

 私自身がSDGsの目標に取り組みたいと思っているのは、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」です。

業界的には金属のリサイクル業で、限りある資源をいかにリサイクルして、また再生していくのかという一役を担っているのですが、今は「アップサイクル」といって、環境の負荷を出来るだけ小さくしながら別の物に生まれ変わらせていくものづくりの広がりをもっと目指していきたいと思っています。

 

 アップサイクル … リサイクルにより出てきた端材を使って、全く別の物として命を吹き込む作業で、別の物として人々の役に立つ商品を産み出すこと

 

 溶解したり、結構なエネルギーを使ったりして、製鉄にいたっては多くの電力を使うため、結構なCO2の排出が発生します。「脱炭素」として、鉄鋼業界もできるだけエネルギーを使わないようなそういった取り組みをどんどん行っていますが、中々、これがゼロにはならなくて、小さなほんの一握りの活動ではあるのですが、そういった大きな電力やエネルギーを使わずに別の物に商品として生まれ変わるというのはある意味これからの肝になるのではないかと思います。

 


― 今後、佐賀SDGs官民連携フォーラムにはどんなことを期待されますか?

 

 私たちの様に入り口が中々わからない、どういう取り組みから始めたらいいのかわからずに足踏みされている所へ発信をしていただきたいというのと、後はマッチングをお願いしたいなと思います。

 自社だけではできない研究分野とか、そういったものに長けたところへの提案をしていただけると心強く活動が広がっていくのは無いかと思います。

 

 


― これからのSDGsには何を期待されますか?

 

 先日の佐賀新聞の広告にも掲載させていただいたのですが、次の言葉が言い表しているのではと思います。

 

   みんながもっと楽しく生きられるといいな

   持続する幸せの創造

   Well-being♡NISHIMURA

 

 そのためには一人一人の意識の目覚め、つまり一人が変わることの大きさ、大切さを実感することが必要不可欠で、SDGsが広がっていく事で統合意識が生れて、よりよい未来を創造していく大きなエネルギーになってくれるのではないかと思います。

  

 皆さんの幸せの価値って人それぞれだと思うのですが、みんなが幸せだと必然的にそれがSDGsなんですよね。持続可能な世界とは結局SDGsによって生成されるといっても過言ではないと思います。

 

以上

 


聞き手: 松尾 俊明