インタビュー記事

取材日:2021.10. 22(金)  

話し手:学校法人佐賀龍谷学園 龍谷中学校高等学校 

     SDGs推進マネージャー

      徳森 千鶴様

 

SDGs推進マネージャー 徳森先生
SDGs推進マネージャー 徳森先生


― SDGsを始められたきっかけやその時の状況について教えてください。

  

 2019年に地球市民の会様と提携し、SDGsに取り組み始めました。その頃は職員もSDGsを知ることからスタートし、世界で取り組むSDGs無くして教育することはできないと考え、教科横断で出来る教育やキャリア教育、全ての教育に関連することだとの思いが、龍谷学園全体としてSDGsに取り組むきっかけになりました。

 

 スタート時は、どのような内容なのか全く何もわからない状態でしたので、地球市民の会に講演・ワークショップをしていただき大変お世話になりました。2年目からは自分たちでも少しずつ行動していこうという事で、学校内のいろんな問題(ごみ問題等)に目を付けて取り組みを実施し、自分たちが知りえた内容を広めたくて、生徒たちが中心となって絵や書道の展覧会を開催しました。

 

年に1~2回、職員対象のSDGs職員研修も行っています。すでに先進的に活動している学校の実践例を参考にしたり、実際にSDGs活動をしている企業の実践例を参考にしたりして、学生たちに還元できるようなプログラムを考えていますし、更にバージョンアップを行うという取り組みを行っています。

 

 


― 学校内では、SDGsを生徒たちにどのように伝えられていますか?

  

 中学1年生や高校1年生のスタートの生徒たちには、今まで同様地球市民の会に講演やワークショップをしていただき、徐々に私たち自身で進められるようにレクチャーしていただき本校主動となる割合を増やしています。高校では1年生はインプットを重視して、高校2年生ではSDGsを広げていくために、例えば地域創生を考え自分たちが佐賀にどのように貢献できるかを提言していく形で進めています。

 

 中学校では活動が盛んで1年生の時はインプットすると同時にアウトプットも進めて行ってます。ただ、生徒たちも毎年変わっていきますので、生徒たちは「インプット・アウトプット」、そして「行動を起こす」という流れを続けていくために、3年単位での計画を立てて進めています。

 SDGs 「龍谷」というように、生徒が変わっても私たちの学校「龍谷」全体がSDGsに取り組んで活動を続けているというアピールをしていきたいと思っています。

 

 当校のビジョンでもある「建学の精神」「心の教育」といった内容は、最初からSDGsにフィットしています。今まで行ってきた活動がSDGsのどれに貢献できるか全くのゼロからスタートするわけではなく、既にSDGsに取り組んでいることの見直しという考えで進めています。

 

 また、SDGsを全面的に打ち出すのではなく、今実施している内容が実はSDGsのどれかに繋がっていると気が付くように、SDGsの目標ありきではなく身近な問題から目を向け、アプローチできることを模索しているところです。

 

 


― 現在進められているSDGs活動について、何か問題や検討が必要な事はございますか?

  

 高校には、様々なコースがあります。コースごとの達成目標もあり、限られた学習時間内で活動する事がが多いため時間の確保が厳しいですが、コースに合ったアプローチでもっと生徒たちが活躍できる場や時間がとれればと思います。

 

 SDGsに関心を持っている生徒たちはたくさんいます。中には、こちらのアプローチに反応を見せてくれる生徒がいたり、実際に行動を起こしたりする生徒も出てきています。3年間で生徒たちに何かを達成させようという考えでは無くて、在学中に身に付けたことが将来のきっかけになる「種」になればという思いで進めています。

 

 また、すでに企業や行政と繋がりを持って活動しています。今後さらに、商品開発のように一緒に協働するものができたらもっと生徒たちの意欲が湧くのではと思います。そのような活動に参加できれば生徒たちがもっと仕事に対して、また地域の事に対して真剣に考えられる機会を与えられるのではないかと思っています。

 

 


― 学校の授業にもSDGsの取り組みが既に始まっていると思いますが、現在どのような状況ですか?

  

 現在、当校の中学一年生と高校一年生の子どもたちに対してはSDGsをインプットするワークショップをしています。実施した生徒たちは小学6年生、または中学生の間にSDGsの概要についてはある程度は聞いているということでした。中には中学校の時にSDGsに関する論文を書いたと話す生徒もおり、学校によってはかなりの温度差があると感じました。その中で皆が満足できるカリキュラムを作成していく必要があると感じています。

 

 また、「本物に触れさせる」をテーマにして、教員・生徒たちが感動して刺激を受けること、それぞれが直接肌で感じることを大切にしています。そのため色々なSDGsに触れる機会には、ただ話を聞くだけではなくて、対談や意見交換の形をとっています。そのために毎日放課後に10分間残って、どのようにプレゼンすればいいのか、TEDのプレゼンを参考にしたり、急に出されたテーマについて答えを出したり、瞬発力を養う活動を時間がとれる限り実施しています。そういう活動を続けていくことで、生徒たちがスキルアップを図り、色々な機会を与えてもらった場合にすぐに対応できる力を身に付けさせています。

 

 今年は、SDGsに寄与できる何かを見つけることをテーマにしています。些細なことからでも構わないので、自分たちの身の回りで出来ることを見つけて、それを各自が実現していく姿を見ていると大変嬉しく感じます。私達教師もSDGsありきではなくて、SDGsを通してどんな教育ができるかなという事を常に考えています。あくまでもSDGsを教えることが目的ではないと思って活動しています。

 


― 生徒達にSDGsを進めて行くにあたり、モチベーションはどのように与えられていますか?

  

 最終目標を提示する事でモチベーションは上がるかなと思っています。例えば、最初に行ったのは森川海人っフェスのブース企画を生徒たち主導でして、体験コーナーを当日設けました。またJC(青年会議所)とタッグを組んで「問題解決学習(PBL) を実施し、その場で出されたテーマに対して自分でどのように解決するのか、その解決法を生徒たちがプレゼンしました。

 

 また、NHK「SDGsの小説」や「SDGsカルタ」に応募したり、新聞紙のブックバッグを使って図書館利用しようと生徒会でブックバックを作成しました。さらにそれを自分たちだけで使うのではなくて、隣接する龍谷こども園の園児に製作意図を伝え、最後の仕上げを共同で行い、使ってもらう取り組みをしました。あらゆる所にあらゆる目標を見つける事で生徒達のモチベーションに繋がっているのではと思います。与えられた時間を生徒たちが楽しんで自由に表現している姿をみるのが楽しかったです。

 

 


― 先生方がSDGsを進めるにあたって、何か問題点や困ったこととかはございますか?

  

 職員も毎年新しく入ってくるため、最初はSDGs初任者研修を行っていて、職員もそこでSDGsのインプットからワークショップを始めます。関心のある職員は校外でもSDGsの研修会に参加しています。教育界だけではなく、企業の方達のお話を聞いたり意見交換を行ったりして、様々な情報を生徒達にフィードバックできるようにしています。

 

 


― 他の教育団体・企業様等と連携して行われている事はございますか?

  

 職員間では、西九州大学様と協定を結び合同の研修会を行っています。つい先日も本校の活動内容をプレゼンする機会を与えていただきました。西九州短期大学副学長様からはSDGsのカリキュラム化された概要についてお話があり、今後共同でSDGsで何かできることがないかお話しているところです。また、佐賀大学様とはSTEAM教育で連携をとりながら、SDGsを絡めて検討しています。生徒間では小城で開催された国際交流フェスタに大学生・高校生の有志を募って一緒にイベント企画を行いました。

 

 昨年度は東京にある玉川聖学院の中等部、高等部との同年齢同士でSDGsをテーマに交流授業による意見交換を行いました。また、サッカー部は例年地域との繋がりを持たせていただき、農作物の収穫作業を行わせていただいたり、車いすバスケットボール大会のサポートを生徒たちが行ったりしています。また、昨年文化祭で高校2年生が佐賀県内企業とコラボしてCMを作成して、それを発表しました。とにかく情報を発信しようとする意欲を持った生徒達がたくさんいるので嬉しいですね。

 


― 行政(官公庁)と連携して行われている事はございますか?

  

 主に佐賀県庁・佐賀市役所職員の方達と連携して佐賀県・佐賀市のSDGsの取り組みのお話を聞かせていただいたり、「SDGs持続可能なまちづくりプロジェクト発表会」にはコメンテーターとして地球市民の会・佐賀大学・佐賀県庁・佐賀市役所職員の方々を依頼しています。また、佐賀県国際交流協会主催の国際交流フェスタに向けていろんな企画に生徒達を派遣しました。日本文化を提供する側だったのが逆に多くの国の方達に学ぶことがたくさんあり、万国共通の事柄を感じて学ぶいい機会を与えていただいたと感じました。

 

 最近では、アバンセで開催された「まなびぃフェスタ 」で活動発表する機会をあたえていただきました。「自分しかできない居場所づくり」として佐賀大学学生と自宅で勉強会を開催したり、提供していただいた規格外の食品を利用して食事会を開催したりしている生徒のプレゼンもさせていただきました。このように、コロナ禍でイベントも少ない中で地道にこつこつ活動を進めてくれる生徒達がいてくれることに対して、非常に嬉しさを感じます。

 


― 官民連携円卓フォーラムに期待する事やご要望はございますか?

  

 教育現場では、子どもたちが大人と接するのは私達教職員か、家族しかいませんので、それ以外の方達と触れ合う機会を用意して、もっと刺激を与えたいと思っています。あらゆる業種の企業様や行政の皆様とタッグを組ませていただいたり、業界の有識者のお話を聞かせていただいたり何か協働できる機会があれば、是非お願いしたいと思います。それもただ話すだけではなく何か成果物があれば、よりお互いを高めあって佐賀をもっと愛せる子どもたちを育成できると思います。佐賀にはこんなすごい人達がいるんだというのを生徒達に紹介したいですし、彼らのキャリア教育のためにも色々な刺激を与えていきたいと思います。

 


― これからのSDGsに期待する事、期待したい事はございますか?

  

 SDGsに寄与することは自分のためというだけでなく人のためであり、佐賀のため地球のために、将来の自分たちの子孫達に残すものをマイナス(負)ではなく、プラス(正)のものを残していく、そこに自分たちが参加していると自覚できるものにしてい行きたいと思います。

 

以上

 

聞き手: 松尾 俊明