インタビュー記事

取材日:2021.11. 24(水)  

話し手:学校法人旭学園 

     佐賀女子短期大学 

      学長  田口 香津子様

      准教授 青柳 達也様

 

学長 田口 香津子様
学長 田口 香津子様


― SDGsを知ることになったきっかけ、始めようとされたきっかけについて教えていただけますか。

  

 私ども佐賀女子短期大学(以下 当校)としてSDGsに取り組み始めたのは、2019年~2023年の5カ年の中期計画を立てる際に本計画策定のバックボーンとしてSDGsという言葉を出したのが始まりでした。この時はまだ具体的にSDGsに対して何かを実施すると言ったことではなく、何かを行うためにはSDGsのことを意識しておく必要があるというレベルでした。

 

 2019年10月には初めて自分のブログでもSDGsについて発信していました。それまでの私はSDGsに対する意識が足りなかったなという思いから始めました。例えば「子どもの貧困」「ジェンダー平等」といったことに対してもそうですが、他にも私達が普段考えている様々な問題(トイレのことや水のこと等)があり、それらが世界の課題であるという意識が本当に足りない状態でした。世界規模でみんなが解決し始めている状況が、それだけ地球規模で危機的な状況でもあるということを改めて認識し、これは本当に自分の身近にあることが世界に繋がるんだという意識で対応しないといけないと思ったのが丁度2019年でした。SDGsをスタートして今年で3年目に入り、今年の12月には旭学園全体でSDGsをテーマにした研修大会を行う予定で進めています。

  


― SDGsへの具体的な取り組みについて、どの様に進められているのか教えていただけますか。

  

 QSP(九州⻄部地域⼤学・短期⼤学連合産学官連携プラットフォーム)という福岡・長崎・佐賀の短期大学、大学全部が一緒になったプラットフォーム授業を行っていて、SDGsの各目標に対して様々なことを各学校にて実施しています。具体的には令和元年から行ってきた授業(「佐賀を歩く ひとり親家庭支援」等)や公開講座(SAGATOCO推進の講座等)などがあります。

 特に地域発信として進めている「生涯学習センター」での公開講座は、2019年にはSDGsを冠にした講座は5つだけでしたが、2021年には全ての講座(35講座)がSDGsの目標と紐づけられて開催されるようになりました。様々な授業、公開講座の中でSDGs目標の課題解決を目指せるように意識して進めています。

 

 また、「ジェンダー平等を実現しよう」については、当校が女子短期大学という自覚をもって進めて行く必要があると思っています。学内的な授業での取り組みよりも公開講座といった地域発信型で身近なところから行うことで、更にSDGsに繋げていけてるのではないかと思います。新しく何かを始めないといけないという意識よりも、普段行っていることが問題解決に繋がるということを発信したかったのですが、まだまだ学内に定着するには早すぎたかなと思います。去年、今年ぐらいからようやく学内的にも皆さんが意識して行動出来ているという気がします。

 

 学問で学生を育てるのと一緒で、地域の方には地域発信で色んなことをたくさんの方に学んでいただくための拠点というように2つの役割があります。(学生の育ちと地域の方達への発信)「旭の未来学講座」の公開講座の中でもSDGsを意識して取り組むような形にすることで、皆さんに当校がSDGsを意識してる学校であると理解していただけるような思いで進めています。

 

 

 


― SDGs目標である「ジェンダー平等」に対して、どのように進められているのか教えていただけますか。

  

 佐賀県の男女共同参画課、佐賀市の男女共同参画室、アバンセの男女共同参画の事業と一緒になって様々なことをさせて頂き、現在も計画中です。佐賀市とは来年の1月に男女共同参画の事業を当校で行う方向でも計画中です。過去にもアバンセで開催された女性の政治参画について学ぶ講座の中に、当校より学生を30人ほど参加させてもらったり、私どもの授業の中でもDVのことやジェンダーのことなどについて1年生全員に学んでもらったりしたこともあります。

 

 それだけでなく、男女共同参画を行っている拠点の行政と一緒に、当校の学生たちが「女性のキャリアアップ志向を高める講座」を受講出来るように、当校が実施しようとしていることに近いことを行っている状況です。これらは、SDGsが始まる前から当校として実施してきたことで、今まで行ってきたことがSDGsに繋がっているのではと思います。


― SDGs取り組みに向けてのスローガンはございますか?

  

 SDGsのスローガンである「誰一人取り残さない」という言葉は、旭学園の創始者でもある中島ヤス先生の考え方と本当に良く似ているため、年2回開催している開講式の挨拶の際、学生たちに「SDGs、みんな知ってる?」と聞く時に、必ずこの中島ヤス先生の話をしています。

 

 当校の学科名は「こども未来学科」「地域みらい学科」というように、子どもの未来の幸せや地域の未来の幸せに貢献出来る人材育成ということで、この学科名を付けています(平成29年より)。5年10年後の未来のために今自分がすべきことは何かという考え方によりこの学科名となりましたが、この考え方はSDGsの理想に繋がると思っています。これから2030年に向けてSDGsに取り組む際には、当校では次の4つのキーワードが必要になると思っています。

 キーワード:「地域」「子ども」「女性」「グローバル」

 


― これからSDGsを進めて行くために、必要なことや大事なことはございますか?

  

 つい先日、選挙が行われましたが、政治に関して投票権の年齢が引き下げられ、短大生がどれだけ関心を持って選挙権を行使できたのかな?と思ったりします。自分たちの1票では世の中は変わらないと思う若者が多いと聞きます。政治同様、SDGsに対しても同じく自分たちが行っていることでは世界は変わらないのではなく、世界を変えていくことに繋がるという意識を若者だけではなく、どれだけ皆が持てるのかが大事ではないかと思います。これからはSDGsに限らず、学生達若者が主役・発信者となる仕掛けが必要になってくると思いますし、変えていかないといけないと思います。それが学校標準となっていくように私達が実践していく必要があると思います。

 


― 他の団体・学校と連携してSDGsについて進められていることはございますか?

  

 色んなところと連携協定を結んでいるのですが、SDGsという点では令和元年(2019年)12月に鷹匠の会社「ファルコンウィング」様と連携協定を結んだのが最初でした。他の大学との連携としては今年3年目を迎えるQSP九州西部地域大学・短期大学連合産学官連携プラットフォーム事業があります。9/26には「子供の貧困」をテーマにしたフォーラムも開催しました。(長崎県・佐賀未来創造基金等)

 今年12月には、旭学園のこども園・高校・短大と全体で初めてSDGsの冠を付けた研修を行う予定です。

 


― 最後に、これからのSDGsに期待することはございますか?

  

 当校には留学生が生徒4人にひとりの割合で在学していますので、色んな考え方が学内には共存しています。SDGsに対しても様々な考え方があります。SDGsは地球規模で世界のいろんな人たちが一緒に解決していく問題であり、視野を広く出来るような考え方を持つ機会を与えてくれるものだと思います。他人事ではなく、世界の色んなところで行われている問題を自分事として捉えたり、皆が人の立場でものを考えたり出来るように考え方が磨かれたらいいと思います。簡単にはできない「誰一人取り残さない」というスローガンを掲げることがいかに大事であるということ、それをあきらめないで続けることで勇気をもらえると思います。

 

 そのためには、その目標に向かって、一歩ずつ近づいていかないといけないし、自分の周りでも誰一人取り残さないという気持ちでいないといけないですね。「あきらめちゃいかんよ!」と言われている気がして、励まされる感じがします。ブームで終わらせたくはないですし、お祭り騒ぎではなく、今地道に行っていることがSDGsに繋がっているという意識を持って、やり続けることが出来たらと思います。当校にいる留学生たちからSDGsのことを聞くと、私達も世界に向けて発信している気になります。これからは、色んな国の色んな文化の子達が同じ教室内に交じって、一緒にSDGsを学んだり取り組んだりしていくことが当たり前になっていくことに期待したいですね。

 

以上

聞き手: 松尾 俊明